宣伝カー設営マニュアル 

1999/07/16
 水島 哲生
(調布狛江府中地区委員会 担当支部)

 このマニュアルは、一般車を宣伝カーとして運用する際に、安全上、機能上の基準留意遵守事項の覚え書きである.すなわち、宣伝専用車両を用いない市町村の議員選挙&首長選挙クラスを想定した設営マニュアルである。(See→サイト総目次)

 元々「宣伝カー」として車体を改造して製造する業者はあるが、一般車に看板とスピーカーとを載せる方式では極小出力以外の「専門業者」はあまり居ない様で、拡声器部は自分で設営する。しかし拡声器メーカー、自動車メーカー、どちら側からも設営マニュアルが発行されて居ない。アンプの取扱説明書に「専用補助バッテリー」との接続図が掲載されているが、それには、安全確保のための地絡保護フューズもなく浮動充電動作のための自動車本体との接続方法も一切記載がないので、使用実態にほど遠く現実の使用には耐えないものである。だから、このクラス(30W〜700W程度)の拡声器の設営は「現場の経験」で、だましだまし使っているのが実状である。音が出なくなるなどの故障や不具合も大混乱に陥るが、加えて煙や火を噴いて宣伝カーがカチカチ山!というのは絶対に避けるべきである。(地絡保護フューズのバッテリーのホット側端子直近挿入については1999年春申し入れた某メーカから晩秋頃に取扱説明書(取説)記載の旨連絡を受けた)

 ところが、地方議員選挙は最も候補者が多く、現在、党地方議員だけでも4千名余と、同数程度の候補者が居て、これが主に一般車を宣伝カーに仕立てて活動している訳だから、文字通り万が一の事態を想定して、事故が故障で済む様な安全確保策と安定運行のための技術基準を定めて設営マニュアル化して、チェックできる様にしておく必要があり、ここにまとめる。

【 目次 】
1.拡声器機器の選定 …………………………………………―3―
@音量の決定
Aマイクロフォンの選択  補足マイク選択:日記#4     …………………………―4―
Bスピーカーの選択
Cアンプ出力……………………………………………―5―
D保守性………………………………………………―6―
2.拡声器の実装 ………………………………………………―6―
@ 地絡ヒューズの容量決定
A 補助バッテリーの容量決定
◎ 実装運行例16台の実績
◎ 車電源の使用可能容量の推定………………―7―
◎ バッテリー容量の計算
B 接続制御、コントロール・ボックスとリモートON/OFF ―8―
C 結線…………………………………………………―9―
D 使用機器の整備  補足→ 専用バッテリー管理:日記#0005
E 機器配置、配線…………………………………―10―
F スピーカーの駆動極性に注意!左右(平行)は同相励振
G 充電、充電器
H 部品表……………………………………………―11―
3.取扱方法の周知徹底(一目瞭然) ………………………―11―
@ スピーカー
A マイクロフォン
B 拡声器アンプ………………………………………―12―
C 車の運行
D 電源バッテリー/充電作業

【 説明図 】
図−1単一指向性マイクロフォンの比感度特性 …………………4
図−2低域遮断濾波器合成特性 ……………………………5
図−3B級プッシュプル・アンプの小振幅歪 …………………5
図−3bB級プッシュプル・アンプの「出力−歪特性」 ………………5
図−4平衡充電電流の算出 ……………………………7
図−5リモートON-OFF回路 ……………………………8
図−6リモートON-OFF回路2種と火花吸収ダイオード ……………9

【 資料 】
【 資料−拡声器アンプの「音声出力−消費電力」特性と、 消費電流の算出
常用出力、常用電流、実値試算(3枚)
【 資料−バッテリーのパワー・アンプ動作時の等価負荷電流 (2枚)
【 資料−宣伝カー実運用結果:99/04統一地方選挙ほか計16
【 資料−各地の日没表(理科年表) 日暮時刻/日没時刻
【 資料−拡声器規制条例 音量制限
【 資料−公職選挙法(抄) 運動期間/運動時刻
【 資料−標準結線1 内蔵リモート制御.補助バッテリー付き
【 資料−標準結線2 外付きリモート制御
【 資料−低域遮断濾波器
【 資料−10 拡声器装備、部品表


1.拡声器機器の選定
 拡声器の選択にあたっての留意事項は、@周囲雑音にかき消されない最大無歪音量、A小音量で音の濁りや歪みの目立たない直線性、Bハウリングを起こしにくい適切な指向特性、C安定動作で、特殊・特別の扱い、特段の専門知識が不必要で保守が楽、D万一の事態でも故障に留まる安全対策、E関係法令との適合性、Fなるべく安価などが挙げられる.
 
 拡声器使用の目的が、情報と意志の伝達、共感を得るための宣伝であれば、聴衆が不快にならない適切な音量・音質の配慮が必要である(右翼の様に、脅迫・威嚇・示威が主目的の場合とは異なる).
 すなわち周囲騒音水準(バックグランド・レベル)に見合った音量で、各人の耳自体の非線形領域にかからない様(=大音量域で伝導部の非線形による混変調歪みを起こす.加齢で目立ってくる∴属人性に留意)、歪みや濁りのない音を聴衆の居る周囲に均一に出せることが必要である(均一に伝わらない場合は、音量の小さい領域に音量を合わせると、大きい領域の音量が大きすぎ、大きい領域に音量を合わせると、小さい領域では聞き取れなくなる).
 客観的性能評価には注意を要する.実務的には、テストする街路を決めておき、どの距離(位置)までスピーチの了解度を保って聞こえるかを確かめる「比較テスト」とすれば誤解を避けられる.人の耳の不確かな大小感覚に頼ってはならない.例を挙げれば、一部ユーザーに、大音量と、歪んだ音の混同がある.拡声器は最大出力以上の入力でクリップして歪むが、大出力拡声器を使えば、歪まないでもっと大きな音が出る.このとき、歪んだ耳障りな音を大音量と誤解する向きが少なくない.歪んだ音と大音量とは全く別物である.
 また、ホーン・スピーカーは「低域遮断周波数」以下が急峻に遮断されて、遮断領域の大振幅信号時にホーン・ドライバー・ユニットで激しい歪みを生じ、時には破損に至ることがあるので、最大定格に余裕を持たせたり、低域遮断濾波器を設けたりの配慮が必要である.男声での使用を考えれば、ホーン最大開口径450mm以上を使いたい.(後述:スピーカーの選択).
 
@ 音量の決定
 東京都の拡声器条例では、10m離れた地点で90dB以下とだけ規定されていて、音の歪んだうるささや、周囲騒音(バック・グランド・ノイズ・レベル)、到達範囲、計測地点、生かしておけない!天誅!殺せ!などの暴力的威嚇的弁舌などについての言及がない.聴感で言えば、飽和歪みと混変調歪みが極めて耳障りで不快なので、善意の聴衆の批判の対象となり易い.だから実務運用上は絶対に飽和させたり、ハウリングさせたりしないことが特に重要である.
 弾圧取り締まりの測定点が現在は往来上であり、指向性の強いホーンスピーカーを使うのだから、スピーカーを若干上向きに(人の居ない方向に)取付けて、一様に聞こえる範囲を広げ、放射軸上10mが計測点にならない様に設営すると、条例の制限値を守った上で広範囲に音声を拡げることができる.放送時にスピーカーの取付ポールを伸ばしたり、近傍の反射物のある方向を避ける(OFFにする)というのは、妥当な工夫である.
 駅頭など、バック・グランド・ノイズが大きい場所を考えると、法定上限の10m地点で平均90dBから逆算し、スピーカ方向を上向きにする損失を6dBとして、1m地点では10^2=100倍=90+6+20dB=116dB基準音量となる.
 
A マイクロフォンの選択
 拡声器のマイクロフォンは、ハウリング抑制のために、感度の低い方向を持つことが必要で、常に音源がこの感度の低い方向にある様にして使用する.単一指向性マイクロフォンといって、構造的には、感度の等しい双指向性マイクロフォンと、無指向性マイクロフォンを1本に組み合わせて、加減算で単一指向性を構成する型が簡便なので多く使われている. (補足:スピーチに非常に適した製品がある!See→マイクの選択:日記#4) パラボラ型や伝達経路の位相差で急峻な指向性を実現するガン・マイクは、大掛かりで可搬性に難があるので拡声器には使われない.
 発電機構としては、湿気に弱い(エレクトレット)コンデンサー型よりも、堅牢なダイナミック型(ムービング・コイル型)を使う.
 接続ケーブル&コネクターは、電気的な周囲雑音の影響を受けにくい「平衡型」を用いることが望ましい.
 複数のマイクロフォンを使う場合に、狭い車内では混乱して誤操作をしやすいので、最低限、マイクロフォンに番号を張り付けて区別し、更に色違いのケーブルを使うと良い.
 また、近年は携帯電話の基地局送信アンテナ近傍など強電界下での運用も増えて混信障害が起こることがある.これを抑制するにはマイクロフォン・ケーブルのアンプ側接続端にフェライト・ビーズを噛ませれば概ね解決するが、アンプの配線が電波を拾っている場合には、アンプ内部での高周波障害対策が必要となる.
 
B スピーカーの選択
 屋外の拡声器用としては、普通、発音能率の良い「ホーン型スピーカー」が使われる.音量で言えばコーン型の10倍〜100倍(10dB〜20dB)違う.野外コンサート用など、音質を重視する場合にのみ、例外的にコーン型を採用し、屋外なら最大1kW〜数kW、屋内ホールで数10W〜数100Wの音響電力で駆動するが、kWクラスの出力ともなると、小型車の荷台全体がスピーカー・ボックスになる様な状態なので宣伝カーなど移動用には使えない.
 
 低域遮断周波数はホーンの最大開口径に反比例する(=最大開口径は概ね遮断波長の0.35倍前後である).経験的に言えば、女声なら最大開口径350mm、男声なら最大開口径450mm必要であった.この口径の10〜20゚C時の遮断周波数fcは、概ね以下の通り.
遮断周波数=音速/遮断波長     開口径↓(小) (大)↓/係数↓
={331.45×SQR(絶対温度/273.15)}/(0.350〜0.450/0.35
={331.45×SQR(283.15〜293.15/273.15)}/(0.350〜0.450/0.35
=343Hz,337Hz,………350mm開口径
/267Hz,262Hz,………450mm開口径(男声に欲しい口径)
  ↑20゜C,↑10゜C
(尚、この最低周波数は、音楽キーの周波数ではなく、物理的周波数である.2倍3倍といった高調波成分が聞こえれば、基本波成分がゼロでも、人の耳には、キー=基本波が聞こえる.)
 ドライバー・ユニットの許容入力は、次項「アンプ出力」を決めて、これより大きくなる様に決定する.たとえばアンプの瞬間最大出力が250Wであれば、50Wドライバーを6本とか、70Wドライバーを4本にして、アンプ出力とスピーカー全体を合成したインピーダンスを一致させればよい.アンプ出力よりスピーカ許容入力が大幅に少ない拡声器セットは、高価なスピーカを消耗品化する。
 
C アンプ出力
 拡声器用スピーカーは、通常は発音能率の良い「ホーン・スピーカー」を用いるから、この低域遮断周波数以下の信号をアンプで遮断できることが望ましい.殊に音楽ソースを利用する場合や小口径のスピーカーを使う場合には、不快な混変調歪みの防止と、スピーカーのドライバー・ユニットの損壊防止に低域遮断濾波機能は必須である.応急的には「スピーチ・モード」で低音部を減衰させて対応できる機種もあるが、「より自然な男声」「自然な音楽」を求めるには、スピーカーの低域遮断特性に応じた低域遮断濾波機能が必要になる.(資料−9)
 
 ホーンスピーカーの能率100dB〜104dB/1W程度とすれば、先出、必要レベル116dB−1W入力での出力レベル104dB=12dB〜16dB出力だから、約16W〜40Wあれば足りることになる.これを前後2方向設置すると約32W〜80W、4方向で64W〜160Wである.若干の音量増加よりも飽和歪みの方がうるさく感じるので、飽和しないための出力余裕をとって+3〜+6dBとすると、アンプの瞬間最大出力は60W(能率=104dB、前後2本)〜640W(能率=100dB、4本)程度(連続最大出力はアンプの設計方針次第で40W〜400W程度)の所要出力となる.
 また拡声器用アンプはいわゆる「B級プッシュプルアンプ」で信号の極性によって動作トランシスターを切り替えるので、小電力領域の歪みが大きい.この小電力領域の歪みの少ないアンプの方が静かな住宅地などでの使用時に思い切って音量を絞ることができる.
 なお、車載用や一般家庭用の音響機器に用いられる「コーン・スピーカー」の発音能率は、概ね90dB〜84dB程度であり、ホーン・スピーカーに比べて能率の悪い分、大電力(10dB〜20dB=10倍〜100倍=80W〜200W←Hi-Fiオーディオ・アンプの常識的な出力)が必要である.
D 保守性
 「保守性」というのは正常動作の確認と、異常が有った場合の調査・修理がたやすいことである.必要なチェック・ポイントに直接アクセスできる様、そしてプロック毎に独立して取りだせる様に設置すると、点検しやすいし、修理作業も楽である.若干大きめにはなるが、ラックに組み込んで、必要な放熱距離を取り、接続端子を介しての接続が望ましい.
 具体例を挙げれば、ブースター・アンプ4台を直接接続配線として、相互に金属プレートでネジ止めしたセットでは、1台に異常があっても配線の切断/再接続、分解が必要で簡単に取り外せない.更に、主ヒューズが、アンプ・ケース内にあって、交換が困難になっている.このセットで現に不具合が有り、出力端子2個が折損、電源スイッチ1個が接点焼付ショート、入力部の接触不良2箇所があり、リモートON-OFF配線を4組とも切断していて補修作業が出来ず、全体をスペアのアンプに載せ替えて予備用として修理した。
 
2.拡声器の実装
 
@ 地絡ヒューズの容量決定
 このフューズは地絡事故時に熔断して、配線の過熱・発火事故を防ぐものであり、配線が正常なら切れてはならない.通常動作中の過電流遮断については、アンプ自体にフューズやサーキット・ブレーカーが内蔵されている.従って、その遮断容量は、方形波動作での瞬間最大出力時の電流に耐える直近上位の定格値を選べば良い.【資料−1】より以下
瞬間最大出力 [W]  100  160  250  500  640 備考
(連続最大出力[W])   60  100  150  300  400  
最大電流   [A]   11.0   17.6   27.5   55.0   70.3 正弦波出力
方形波最大電流[A]   17.2   27.6   43.1   86.2  110.4 地絡フューズ最低
フューズ電流値[A]   20   30   50  50×2
(100)
 30×4
(120)
 

A 補助バッテリーの容量決定
◎ 実装運行例16台の実績をみると、
☆ 補助バッテリーを使わないでアンプを主バッテリーに直接接続した場合、
○ 現規格(排気量850cc)軽自動車に直接搭載で最大瞬間出力160Wが可能.
○ 小型車に直接搭載では最大瞬間出力250Wが可能.
○ 排気量2,700ccのディーゼル車(ニッサンHOMY)で最大瞬間出力300W可能.
☆ 主バッテリーを増強した場合(→190[AH])
 500W出力アンプでは、バッテリーが上がり気味となる.
(a) ニッサン・バネットAT車に設営した500W出力アンプでは、デモ行進先導車に使うとAT車なのに運行中に次第にエンストを起こす様になる.バッテリーが放電気味である.
(b) トヨタのボックス車に設営の640W最大出力アンプでも、やはりバッテリーが上がってきて、始動しにくくなっている.
緊急対応:選挙カーとしての連日の使用には、毎夜に追加充電を行なう.
安定動作:補助バッテリーを設け、使用中の充電電流を増やす装置を付ける.
◎ 車電源の使用可能容量の推定
車の使用電力量は、
イグニッション・コイルで3[A]〜5[A]
標準的なヘッドライトが50W〜60Wが2灯で、8[A]〜10[A].
エアコンは、電磁クラッチでエンジン直結だから、ファンの分で60W、10[A]程度.
高輝度型のヘッドライトが100W〜120Wを2灯点灯させて、16[A]〜20[A]
高輝度のフォグ・ランプが150W程度で、12.5[A]
であり、多くの場合、オプションで追加可能であるから、標準装備との差額は利用可能と考えられる.すなわち、夜間運行でも高輝度ヘッドライトと標準の差=10[A]と、フォグ・ランプ分=12.5[A]の、計22.5[A]が利用可能、昼間であれば最大計32.5[A]が利用可能と考えられる.
◎ バッテリー容量の計算
 消費電流は、等価平衡充電電流値で考えるべきだから「【 資料− 】バッテリーのパワー・アンプ動作時の等価負荷電流」に依れば、
瞬間最大出力 [W]  100  160  250  500  640 備考
(連続最大出力[W])   60  100  150  300  400  
運用平均電流 (1/3)   3.7   5.9   9.2   18.3   23.4  
最大電流   [A]   11.0   17.6   27.5   55.0   70.3  
平衡充電電流 [A]   5.5   8.8   13.8   27.5   35.2 充電効率ηを考慮
 拡声器のような間歇負荷では、瞬間最大値の時に放電した分を、等量充電したのでは、充電効率η分しか回復できず、(1−η)分が放電してバッテリーが上がるので、充電損失分を加えて充電して平衡が保てるということである.
 κ=最大値/平均値,η=充電効率 として
充電量と放電量が平衡する値/平均値]を求めると (前出【 資料−2 】より)
Imax=κIavr…………………… @
Imax/Iequ=ηκ−1)+1]……… B
Iequ/Iavr=κ/[ηκ−1)+1]……… C
  κ=3,η=0.5の場合、
  Iequ/Iavr=3/[0.5(3−1)+1]=1.5
 すなわち、最大電流が平均電流の3倍の間歇使用で、充電効率が50%の場合、充電電流は平均消費電流の1.5倍の値を供給すれば充放電が平衡することになる.
【 図−4 】 平衡充電電流の算出
 400W以上出力の拡声器を用いる場合には、補助バッテリー設置に加えて、充電量を増やす工夫が必要になる.バッテリーの容量を増やせば内部抵抗が下がって充電量は増えるが、オルターネーター(車載3相交流発電機)の出力特性に制限されて、一定以上は増えない.(前出平衡充電電流参照.使用実績2台から考えると、出力500W〜640Wでは発電機の増強なしに動作可能の見込み).日中は、この分を補償して充電する.夜間は、ヘッドライト分の負荷が増えて、発電容量が不足するので補助バッテリーで動作させる.東日本の冬の日没16:00〜使用終了20:00までの4時間(【 資料−4 】各地の日没表/日暮時刻/日没時刻「理科年表」)を、平均30A中の15Aの電流を分担して流し続けるには、最低15[A]×時間=60[A時]、低温時動作劣化余裕で2倍の安全度をみて120[A時]前後の補助バッテリーを準備したい.小型車用が30AH前後であり、中型〜ディーゼル車用の80〜120[AH]程度が必要となる.
 
 また、このバッテリーに充電する工夫が必要である.充電は毎晩人が行えば不可能ではないが、なるべく無操作の自動が望ましいので、前出LOWギヤ運転や、夜間運行は減光運転など、充電電流を増やす工夫が必要である.
 AT車の場合、負荷が軽いと回転数が落ちてアイドリング状態になって充電不足になり、エンストを起こすので、デモ行進中のエンジンの回転数を上げて、発電量を増やす運転が必要だ.すなわちギヤ位置を「ドライブ」ではなく、「LOW=1速」に固定して走れば、エンストも起こりにくい.マニュアル・ミッション車の640W出力では、LOWギヤでのエンジン回転数が高いためか、始動は弱くなっても、デモ行進走行中のエンストは起こしていない.
 
B 接続制御、コントロール・ボックスとリモートON/OFF
 自動車での大電力負荷は、電源電圧が直流1213.2[V]と低いので、大電流となり、配線での電圧降下を避けて特に短くする必要がある.そのため、ヘッドライト配線など大電流部は、リレーを使って主回路を最短距離で配線し、操作部までは制御線を引き回すのが普通である.
 拡声器アンプも最大連続出力が概ね60Wを越える大出力のものはパワー・リレーを内蔵して、リモート制御が可能になっている.この機能を使えば、場所をとる補助バッテリーとパワーアンプを後部貨物スペースに置いて最短距離で配線を行い、制御卓に超小型のマイクロフォン・アンプ、ミキシング・コントロールアンプを置いて運用できる.電圧降下防止だけでなく安全確保の観点からも大電流配線を長々と放送席にまで引き込んではならない.
 マイクアンブ自体は専用IC1石で2本分構成でき、続くブースター・レベルへの増幅もオペ・アンプIC1石〜(1/4)石なので、何処にでも収まって、コントロールアンプの大きさは操作部(VR,音質,カットオフ周波数,電源制御,スピーカー制御)+表示部(同前)+コネクター部(マイクロフォン,AUX,出力,リモートON-OFF,電源)となる.
 リモート回路のON-OFFは、電源供給()側でON-OFFを行う方式(UNI-PEX NT-800A)と、接地側()で行う方式(UNI-PEX NB-101,NT-60)があり、異なる方式を含めての接続の共通化を考えると、アンプ毎に制御接点を設けた方が良いが、その分配線が増える.スナップ・スイッチで最大4回路の標準製品が市販されている.
 直流の誘導負荷(コイル)のON-OFFは、スパークによる接点損耗が激しいので、火花消去回路が必要である.商用交流では、毎秒100回〜120回も電圧がゼロを通り逆方向になるので放電が止まりやすいが、直流ではコイルの蓄積エネルギーが無くなるまで放電が止まらない.
 これは、印加電圧に極性のあることを利用して、遮断時のコイルの逆起電力を短絡する様にダイオードを接続することが有効である.(右図参照.左端のUNI-PEX NT-60,NT-101,NB-101及び、中央図NT-800Aでは、リレー・コイルにはスパーク防止ダイオードが接続されているが、チョーク・コイルの挿入された主回路接点にはダイオードがない.無音時にのみOFFにするのなら問題ないが、大電流時にOFFにすると、接点が損耗するので、内部を補修したセットには[図−5]回路図に示す様に主回路のチョーク・コイル部に火花防止ダイオードを挿入した.1発きりのパルスであり、商用周波数半サイクル30A程度を耐えられる電源整流用1Aダイオード\11.〜\33を使用した).
 
C 結線
 160Wアンプ×4の結線例を【資料−7】【資料−8】に示す.連続使用でバッテリーが上がり気味になるのを防ぐために、当面は
1. 主バッテリーは撤去しない.復活して、補助バッテリーと並列動作とする.
主バッテリー室はスターター・モータ直近にあって、電圧降下が起こらない配置になっているが、大型バッテリーに積み替えるスペースはない.これを後部荷物スペースに移動すると、スターター・モータの配線が延びて、始動時に電圧降下をしてスパークが弱くなるので、元々の主バッテリーを残すか、少なくとも他の電気配線もバッテリー端子まで延長して、スターター動作時のモータ配線の電圧降下を回避する必要がある.
2. デモ行進時は、「ドライブ」ではなく、「LOW」にしてエンジン回転を上げる.
3. 夜の運行時は、できればロー・ビームで走る.
フォグランプや、高出力ヘッドライトは運行中点灯しないこと.(充電量増加)
4. 走行中は、補助バッテリーにも充電する(アンプOFFでも充電する)
5. 補助バッテリーの浮動充電装置を開発設置する.
→アンプの大電流は主に補助バッテリーに負担させる.
6. 地絡フューズを補助バッテリー端子直近に設置する.(安全対策)
7. 内蔵リモートON-OFF機能を利用する.【資料−7】[図−5,−6]
 
D 使用機器の整備
 貯蔵、放置で劣化する部分は、ほとんどが、接点部の酸化や汚れの付着、ワイヤー類の劣化・折損、バッテリーの消耗であり、古い装置では、可変抵抗器(ボリューム・コントロール)の接触不良と電源部電解コンデンサーの容量抜け不良が高頻度で出現する.
 加えて、人為的要因が噛んで、専用ケーブル紛失による接続不能とか、接続ターミナルの折損・止めネジ紛失、制御配線切断、取扱説明書・仕様書の散逸・廃棄といったトラブルを抱えている.
 配線部から携帯電話などの高周波を拾う場合には、アンプ内部での高周波障害対策が必要となる.最近は思い掛けない場所で電波障害を受けることがあり、大電力送信所近傍での運用が避けられない場合には、事前に、電波雑音を拾いにくいセットを選別して取り付けるとか、配線を金属遮蔽物で覆うとか、外部接続部、特に入力部に貫通コンデンサーなど高周波阻止対策を実施する.ミキサー・アンプのNCX-511(UNI-PEX)では、一部製品で電源供給部に貫通コンデンサー100PFを挿入しているが、雑音阻止と高周波発振対策とみられる.ところが、高周波障害の対策のない市販拡声器アンプが少なくない(UNI-PEX NB-1502では無対応を明記)ので現場対応となる.数メートル動くと妨害状況が変わるので、運用中の宣伝カーに少し位置を変えて貰うのも現実的対処方法である.
 これらの障害の多くは、設置前に行う動作テスト時の清拭作業で回復する.ボリューム接触不良回復に接点復活剤を塗布する際は、損傷回避にケースなどABS樹脂を外してから行う.ボリュームの接触不良、容量抜けなど、修理が必要なものは、修理マニュアル(99/03作成)を参考に修理をしておくこと.
 
E 機器配置、配線
  補助バッテリーとブースターアンプ、リレー、地絡フューズを電池直近に配置.
   補足→専用バッテリー管理:日記#0005
  拡声器のパワー・アンプ上に荷物の載らない配置と、柵の設置←過熱障害防止
 ○ コントロール・アンプを前後席から操作可能の位置に設置(放送席).
  ケーブル接続部に力が加わらない配線とする.殊に「ギボシ端子」は簡単に抜ける!
   床のゴムシート下に接続点を作らない.∵すぐ抜けるが、抜けた場所が見えない.
  車外配線にギボシなど不安定な接続点を作らない.(04/06接触不良&逆接続事故)
  車内でのハンダ付け作業を避ける.結線作業のみにする.
F スピーカーの駆動極性に注意!左右(平行)は同相励振。前後は逆相(国立競技場方式)
 スピーカーを同方向に向ける場合、互に逆極性だと音が相互に干渉して打ち消し合い、スピーチを了解できる到達距離が大幅に減少する。2スピーカーの中央に立ち、頭を10cmほど左右に動かしてみて、音像が2つのスピーカーの外側に飛ぶ場合は逆極性であるから接続を変えること。同相励振だと音像は2つのスピーカーの中央付近になる。最近はアンプもスピーカーもコネクター接続で専用接続ケーブルを使って接続するから、選挙後や車整備などの解装時にケーブルを切断しないできちんとコネクターから外せば逆極性にはならなくなった。だが自動車修理屋も艤装担当も解装時に切断する例が多く、後にトラブルになっているので、修理屋を含めて専用ケーブル切断禁止を徹底する。
  弁士が車外でマイクを使う場合は、必ず指向性マイクを使い、最低感度方向を妨害音源に向けてハウリングを防ぐのが基本だが、加えて前後のスピーカーを逆極性として弁士の位置で打ち消させると更にハウリングを起こしにくくなる=不快でなく大きな音を出せる(国立競技場方式:東京オリンピックでの設定)。大きな駅前など大騒音での運用がある場合には採用した方が良い。この場合専用ケーブルでは極性反転出来ないし、極性転換機能付きアンプの市販品が見あたらないので、スピーカーコネクターに噛ませる「極性反転アダプター」を作成して準備する。(この項04/06市長選トラブル04/06/20追記)
 車に設置してからの修理は作業を極めて困難にするので、設置前のテストを慎重に行うこと.
 
G 充電、充電器(特別な装置無用が望ましいが)
○ イグニッション・キーと連動し、オルターネーターだけで済めば最良
連動信号は、通常車載AV端子から採るが、分解が面倒なら微少電流なのでシガレットライターコンセントから採って可
○ 特殊な操作が不要の専用充電器を拡声器の一部として設置する(700W程度までは無用)
○ 外部から充電を必要とする場合は、コンセントのみ接続とする.
一般オペレータに、電池端子の正負を判断させて鰐口クリップで接続させる様な仕様にしてはならない.それは混触、誤接続による発煙、発火事故に直結する.
 
H 部品表、資材、工具一覧
 必要部品は、【 資料−10 】「拡声器装備、部品表」に示す通りである.
電子関係の部品、工具は秋葉原電気街が安く、自動車関係の部品、工具は自動車部品店が安い.それぞれ概ね2倍近い開きがある.だから早くから準備すれば、安く上がる.
 細い撚り線をカシメ配線にすると緩む危険性があるので、念のためハンダ付けする.本格的修理には、別稿メンテナンス・マニュアル参照のこと.
 
3.取扱方法の周知徹底一目瞭然
 「拡声器」は、「日用品」ではないので、その取扱については遵守事項と操作概要を示す一目瞭然の表示と、必要資料へのアクセスが出来るようになっている必要がある.特に、遵守事項を守らないと障害を起こす可能性のある場合は、オペレータになりうる全員への周知徹底が欠かせない.
 オペレータに目に付く場所に、「操作説明カード」「取扱説明書」を置き、管理者が「保守マニュアル」&「仕様書、結線図、回路図」を、保証書、サービス網一覧などと共に保管して置くべきである.製品の保証期間は6ヶ月〜1年であり、これら拡声器関係の特殊品の整備を引き受けられる業者がほとんどないから、製造中止から7年以上経過していて(=次々回の選挙時)保守・修理・資料提供を断られ、新品同様(2週間しか稼働してない!)なのに、一般には新製品に買い換えるほか無くなってしまう.(営業関係では断られ、工場技術サービスから入手もある。営業に買い換えを言われるのは当然だ。'1999/末。資金が潤沢ならレンタルにしてメンテを業者任せにすれば良いが、新品でないと本番中の故障率は変わらないだろう)
 
@ スピーカー
 ホーン・スピーカーは指向性が強いことを念頭に、下を向けない.直接反射物に向けない.聴衆位置での直接音と反射音の干渉に留意して、反射音が小さくなる方向を選ぶ.低域遮断周波数が200[Hz]以上になる場合(最大開口径が概ね450mm未満)に、男声や、音楽ソースを加える場合には、アンプを「スピーチ位置」にするとか、遮断周波数に応じた低域遮断濾波器を動作させるなど、低音域を抑制して使用すること.
 
A マイクロフォン
 マイクロフォンの指向性が阻害される持ち方(=カバー部を手のひらで覆う持ち方)を明示で禁止する.マイクロフォンの感度の低い方向(=マイクロフォン・コネクターの方向)を障害・妨害音源に向けて影響を軽減する.その間に音量調整を行ってハウリングを回避する.拡声器を扱う全員に徹底が必要なこの操作は、「アナウンサー学校」のレジメにも記述がない.だからハウリングを感じると、マイクロフォンを掌で覆って、更にハウリングを酷くしているのをよく見かける.
 マイクロフォン・スイッチはなるべくマイクロフォン・ボリュームを使いたい.話す直前にボリュームを上げ、話し終えたらボリュームを下げる様にすれば余分な雑音を出さないで済む.マイクロフォンに付属の手許スイッチでは無用の雑音の避けられないので、音量調整によってON-OFFすることが望ましい.
 
B 拡声器アンプ
 電源ON-OFFや様々な切替操作は、音量調整をゼロ近くに絞ってから行うことが望ましい.ブツブツと聞き苦しいし、スピーカーのドライバー・ユニットを損傷する危険がある.殊に、スピーチ・モードからノーマルモードに戻すときにステップ状の直流電位が加わる機種(UNI-PEX NT-101,NT-60,NT-40)があり、この機種で、スピーカーの許容入力に余裕がない場合は、電源を一旦OFFにしてから切り替える方が安全である.
 ビラや雨具などを、後部アンプの上に載せると、アンプはたちまち過熱して、異常動作したり、寿命を縮めてしまう.これはどの宣伝カーでも見られることである.だから設置時に、上に物を載せられない高い位置に取り付けるとか、物理的に放熱スペースを確保して強制空冷ファンを付けるなどの対策を行う必要がある.
 
C 車の運行
 絶対的遵守事項としては、エンジンの止まっている時には、アンプは必ずOFFにすること.これは、イグニッション・キーに連動して(アクセサリー端子で)電源制御を行うことが必須である(リモートON-OFFも可.ニッサン自動車推奨のアクセサリー端子配線取出し点は、シガレット・ライター配線である)
 300W〜400W以上の大出力で、バッテリー上がりが心配な場合には、充電量を下げないために、エンジン回転を上げて、なるべくLOWギヤで運転すること.
 
D 電源バッテリー/充電作業
 バッテリーの無負荷端子電圧が13.5V前後なら、一応充電完了として扱う.
しかし、バッテリーが劣化すると、内部抵抗が増え、大した音量(=消費電流比例)でないのに端子電圧が下がる様になる.次第に上がり気味になったら、蓄電容量が減っているので、バッテリー交換が必要となる.
 
運用実績を言えば(【 資料−3 】宣伝カー実運用結果:参照)
 瞬間最大出力が160W以下(連続最大出力が100W以下程度)の場合、新規格の軽自動車=バッテリー容量32AHでも、日常の充電作業は無用であった.
 瞬間最大出力が250W以下(連続最大出力が150W以下程度)の場合、小型車にそのまま設置しても、日常の充電作業は無用であった.
 
 瞬間最大出力が300W以下(連続最大出力が200W以下程度)の場合、バッテリー容量が100AH余もあれば、日常の充電作業はほぼ無用である.
 
 400W〜640W出力連続最大出力が240W〜400W程度)では、バッテリーが上がり気味なので、LOWギヤ運行などエンジン回転数を上げて運行する様留意すれば、概ね運行可能である.低温期や夜間運行が長い場合などバッテリーの性能が落ち、或いは負荷量が多い場合は、充電器を拡声システムに組み込み、ACプラグをコンセントに差すだけで充電する様にしておき、運行しない夜間(20:00〜08:00)にAC電源から充電しておけば、冬季でもバッテリー上がりの心配はない見込みである.
 
 kWクラスの音響出力電力では、オルターネーター(車載3相交流発電機)とバッテリー双方を大出力のものに交換する必要がある.アンプ取扱説明書掲載の、補助バッテリーのみによる運行は毎夜の充電の手間が掛かりすぎて、運行困難である.


【 資料−1 】
【拡声器アンプの「音声出力−消費電力」特性と、消費電流 】
電源電圧 :E
パワー素子肩電圧:Vk
瞬間最大出力 :Pp
連続最大出力 :Pm
瞬間最大出力時最大電流:Ip
振幅率(0〜1):k
出力トランス効率:ηt
直流電流(平均値):Idc
正弦波増幅動作とするとき
Pp=(E−Vk)×Ip×ηt/2……@’
Ip=Pp/{(E−Vk)×ηt/2}……@
従って、振幅率kのときの
瞬時電流は
=k・Ip …………A
瞬時電圧は
=k・(E−Vk)………B
出力電力Pは   ……トランス損失含む
(Pp,k)=V・I/2………C
(ピーク値→実効値変換:1/SQR(2))

=k2・(E−Vk)・Pp/{(E−Vk)×ηt/2}/2
=k2・Pp/ηt ……………………………D=A&B
直流電流(平均値)Idc(Pp,k)
Idc(Pp,k)=k・Ip×(2/π) ………正弦波の平均値
=k・Pp/{(E−Vk)×ηt/2}×(2/π)
k・(4/π)・Pp/{(E−Vk)×ηt} ………………E
直流入力電力Pdcは
Pdc(Pp,k)=E・Idc(Pp,k)
=E・k・(4/π)・Pp/{(E−Vk)×ηt}
=(4/π)・k・Pp・{E/(E−Vk)}×[1/ηt]………………F
従って変換効率ηpは    ………(トランス損失も出力に含む.正弦波動作)
ηp(k)=出力電力/直流入力電力 ………D/F
=(k2・Pp/ηt)/[(4/π)・k・Pp・{E/(E−Vk)}×(1/ηt)]
(π/4)・{(E−Vk)/E}・k………………G
実効効率=ηp・ηt
方形波波増幅動作とするときの電流Isq
Isq=k・Ip
=k・Pp/{(E−Vk)×ηt/2}
=k・2・Pp/{(E−Vk)×ηt}
=Idc・(π/2)………………H
出力段の変換損失L
L(Pp,k) =Pdc(Pp,k)−P(Pp,k)
=[(4/π)・k・Pp・{E/(E−Vk)}×(1/ηt)]−2Pp/ηt
=(k・Pp/ηt)・[(4/π)・{E/(E−Vk)}−k]………I
上記式はkについて上に凸の放物線だから
k=0,及び k=(4/π)・{E/(E−Vk)で、L =0 となり ………………J
={(4/π)・{E/(E−Vk)}/2 ………(中点)
=(2/π)・{E/(E−Vk)} で最大値PL maxとなる ……K
L max=([(2/π)・{E/(E−Vk)}]・Pp/ηt)・[(2/π)・{E/(E−Vk)}]
=[(2/π)・{E/(E−Vk)}]2 ・(Pp/ηt)
≒0.4053・{E/(E−Vk)}2 ・(Pp/ηt) ………L

【 常用出力、常用電流 】
  スピーチや、音楽の場合、様々な周波数の信号の重畳波形であり、平均振幅よりかなり大きなピーク値を生ずる.また、音の大小自体が重要な情報であり、「更に大きな音」を無歪で出しうるレベルを常用レベルとする必要がある.この「更に大きな音」のピーク値を無歪で出力するレベルが「常用最大出力レベル」となる.AM放送の平均変調率が概ね30%に調整されているのはこのためである.AM放送では、自動レベル調整など細かに調整の上放送している.
  拡声器でも、これに準じて「常用最大出力レベル」を決めると、
無歪最大出力電圧の1/3〜1/4となる.
k=1/3〜1/4             ………………………………M
出力電力では、2乗倍の1/9〜1/16(−9dB〜−12dB)ということである.

実値試算
今、
電源電圧:E=13.2[V]
パワー素子肩電圧:Vk=1.0[V]
瞬間最大出力:Pp=160[W]………(NT−101/NB−101)
   [250[W]………(NB−1502)]
出力トランス効率:η=0.95   の場合
直流電流Idc(160)=k・(4/π)・160/{(13.2−1.0)×0.95}
17.577k[A](但し、振幅率:k=0〜1)
Idc(250)27.464k[A]………NB−1502:共用の上限!?境界域
Idc(640)70.308k[A]………NT−101×4:補助電池必要
方形波直流電流IsqIdc・(π/2)
≒27.6[A]但し、振幅率(0〜1):k (30A FUSE要)
 {43.1[A]   ………NB−1502}  (50A FUSE要)
変換効率ηp=(π/4)・{(E−Vk)/E}・k
=0.7854×{(13.2−1.0)/13.2}×k
0.7259k    但し、振幅率(0〜1):k
出力部最大損失PL max(160) =(Pp/ηt)・[(2/π)・{E/(E−Vk)}]2
=[(2/π)・{13.2/(13.2−1.0)}]2 ×(160/0.95)
=79.9[W]………NB−101/NT−101
L max(250)=[(2/π)・{13.2/(13.2−1.0)}]2 ×(250/0.95)
=124.9[W]………NB−1502
L max(640)=[(2/π)・{13.2/(13.2−1.0)}]2 ×(640/0.95)
=319.6[W]………NB−101×4
その場合の振幅率=(2/π)・{E/(E−Vk)}=(2/π)・{13.2/(13.2−1.0)}
=0.6888(最大損失時振幅率)
常用出力、常用電流
直流電流Idc(160)17.577k[A]
Idc(250)27.464k[A]
Idc(640)70.308k[A]
 この値から、平均電流Iavr(Pp)を求めると
      無歪最大出力160[W](NB−101/NT−101)
Iavr(160)17.577×(1/3〜4)
5.85[A]〜4.4[A]
Iavr(640)17.577×4×(1/3〜4)
23.4[A]〜17.6[A]    :補助電池要
      無歪最大出力250[W](NB−1502:補助バッテリー要不要の境界域)
Iavr(250)27.464*(1/3〜4)=9.15[A]:121[W]〜6.9A
 この値は、フォグ・ランプなどの補助光源と同等である.→消費電力では同等に扱える!!
瞬間最大出力が250Wを越えると補助電池が必要となる.

【 資料−2 】
バッテリーのパワー・アンプ動作時の等価負荷電流
◎ バッテリーの等価負荷電流の計算 
 拡声器のような間歇・脈動負荷では、瞬間最大値の時に放電した分を、等量充電したのでは、充電効率η分しか回復できず、(1−η)分が放電してバッテリーが上がってしまう.
 電球など一様負荷であれば、「充放電で平衡している」ということは、オルターネイター(車載3相交流発電機+シリコン整流器ブリッジ)の出力がそのまま消費されて「バッテリーにはほとんど電流が流れない」ということだが、間歇・脈動使用の場合には充電効率の損失分だけ多く充電して、充放電が平衡するのである.
 拡声器負荷だから、瞬時には平均の3倍余という電流を消費し、瞬時にはほぼゼロになる動作をしている.一方バッテリーは化学反応で蓄電するため、充電の効率ηは50%前後である.だから、10[A]で1秒間放電した分を埋めて充電するには、20[A]充電で1秒間、或いは10[A]充電で2秒間かかる訳で、これによりバッテリーの入出力電流がバランスしているのに、充電損失分が不足して次第にバッテリーが上がることが起こる.







 κ=最大値/平均値 として
[充電量と放電量が平衡する値/平均値]を求めると
Imax=κIavr ……………………………………… @
Iequ×T(1−1/κη=(Imax−Iequ)×(T/κ)…… A
ηT(1−1/κ)+(T/κ)]Iequ=Imax×(T/κ
ηκ−1)+1]Iequ=Imax ……… (項整理)
Imax/Iequ=[ηκ−1)+1] ……………………… B
κIavr/Iequ=[ηκ−1)+1] ……… (Bに@を代入)
Iequ/Iavr=κ/[ηκ−1)+1] ……………………… C
  κ=3,η=0.5の場合、
  Iequ/Iavr=3/[0.5(3−1)+1]=1.5
 すなわち、最大電流が平均電流の3倍の間歇使用で、充電効率が50%の場合、充電電流は平均消費電流の1.5倍の値を供給すれば平衡することになる.
 
 実運用例でも、250W〜300W出力までは安定して動作できるが、500W以上出力ではバッテリーが上がり気味となる事実と良く一致する.
 

 消費電流は、資料−2:拡声器アンプの「音声出力−消費電力」特性と消費電流の推定計算に依れば、直流平均値で
瞬間最大出力 [W]  100  160  250  500  640  備  考
(連続最大出力[W])   60  100  150  300  400  
運用平均電流 (1/3) 3.7 5.9 9.2 18.3 23.4  
最大電流   [A] 11.0 17.6 27.5 55.0 70.3  
方形波最大電流[A] 17.2 27.6 43.1 86.2 110.4 地絡フューズ最低
平衡充電電流 [A]  5.5   8.8  13.8  27.5   35.2  充電効率ηを考慮 
 
 車載発電機の利用可能容量が前出22.5A以上あって、運用平均電流が500[W]アンプで18.3A、640[W]アンプで23.4Aということなので、電球の様な一定負荷であれば、総て動作可能ということであるが、スピーチ・アンプの様な脈動負荷では充電効率ηを考慮した等価平衡充電電流で判断すべきだから、500[W]アンプで27.5A、640[W]アンプで35.2Aと考えられる.
 
 400W以上出力の拡声器を用いる場合には、補助バッテリー設置に加えて、充電量を増やす工夫が必要になる.(前出平衡充電電流参照.出力500W〜640W使用実績2台から考えると、発電機の増強なしに動作可能).日中は、この分を補償して充電する.夜間は、ヘッドライト分の負荷が増えて、発電容量が不足するので補助バッテリーで動作させる.東日本の冬の日没16:00〜使用終了20:00までの4時間を、平均30A中の15Aの電流を分担して流し続けるには、最低15[A]×4時間=60[A時]、低温時動作と劣化余裕で2倍の安全度をみて120[A時]の補助バッテリーが必要である.小型車用が30AH前後であり、中型〜ディーゼル車用の80〜105[AH]程度が必要となる.
 また、このバッテリーに充電する工夫が必要である.充電は毎晩人が行えば可能だが、なるべく自動が望ましいので、前出LOWギヤ運転や、夜間運行は減光運転など、充電電流を増やす工夫が必要である.
 
 AT車の場合、デモ行進中のエンジンの回転数を上げて、発電量を増やす運転が必要なのだと思う.すなわちギヤ位置を「ドライブ」ではなく、「LOW=1速」に固定して走れば、エンストも起こりにくいと思われるので、適当な機会に確認したい.マニュアル・ミッション車の640W出力では、LOWギヤでのエンジン回転数が高いためか、始動は弱くても、デモ行進走行中のエンストは起こしていない.

【資料−3】
【 使用実績 】 1999/07/25現在、水島集約
○ 車載バッテリー直接接続で連続最大出力150W程度(最大250W)まで可!
○ 主バッテリー増強(190AH)で連続最大400W(最大640W)出力可能.充電要.
○ 長期使用・不特定者使用では、イグニッション・キーとの連動は必須条件.
(選挙=連日08:00〜20:00 の間、ほとんど休み無く5〜17日間連続運行.詳細は【 資料−6 】公職選挙法(抄)参照

例T 小型(2000cc?トヨタ)ボックスカーの、主バッテリーを外し、後部に190AHバッテリーを載せて、最大出力640Wのアンプ(UNI-PEX NB-101×4台)を直接取付て97/07選〜99/04市議選候補者カーとして運行して、最終日まで持ったが、バッテリーが若干上がり気味.→ギヤ1速固定運行でOK!を確認(始動が弱い=調整不良. 自動車整備修理業者の施工.1台)
例2 小型(1600cc?ニッサン、バネットAT)ボックスカーの、主バッテリーを外し、後部に190AHバッテリーを載せて、最大出力500Wのアンプ(UNI-PEX NB-1502×2台)を直接取付て97/07都議選〜99/04調布市議選候補者カーとして運行して、最終日まで持ったが、バッテリーが若干上がり気味で、デモ行進先導車に使うとAT車なのに時折エンストする.炎天下の平和行進99/07/25で7qデモ中に終点付近の信号待ちで何回もエンスト→(主バッテリーを残すべきだったのでは??ギヤ1速固定運行でOK!を確認   自動車修理業者の施工.1台)
例3 立川のディーゼル車(ニッサンHOMY270)1台は、'92頃から最大出力300Wのアンプ(松下通信×2台)、105AHの補助バッテリーを搭載イグニッション・キー非連動で主バッテリーと接続.接続リレーの切り忘れで主バッテリー・補助バッテリー共々過放電損傷=交換を繰り返している.使用頻度は均して月に1回前後.この使用頻度では実質補助バッテリーなし(∵損傷を長期に放置)で動作している.不特定多数が扱う宣伝カーとしては「イグニッション・キー非連動」が最悪の仕様となってトラブルを誘発している.業者施工?1台
例4 小型車5台に最大出力250Wのアンプ(UNI-PEX NB-1502)を直接取付て99/04K市議選候補者カーとして運行して異常なし. (5台)
例5 軽ボックスカー2台(三菱&マツダ)に最大出力160Wのアンプ(UNI-PEX NB-101,NT-101)を直接取付て99/04C市議選候補者カーとして運行して異常なし. (2台)
例6 小型車に最大出力120Wのアンプ(UNI-PEX NT-800A)を直接取付て99/04C市議選候補者カーとして運行して異常なし. (1台)
例7 小型ボックス車に最大出力100Wのアンプ(UNI-PEX NTC-60)を直接取付て99/04C市議選候補者カーとして運行して異常なし. (1台)
例8 最大出力100Wのアンプ(UNI-PEX NDA-602)を直接取付て99/04F市議選候補者カーとして運行して異常なし. (1台)
例9 C1台、K1台、F1台は個人持ちのアンプ.残り市議選候補者カー3台分は、詳細不詳.補助バッテリーなしで運行し、異常なし.
合計16台


【 資料−4 】
【 最早日没・日暮 】
「理科年表1999年版」P3〜5,31,32,36〜48(歴部)より
 
地名根室札幌青森盛岡仙台千葉東京福岡
最早日没15:4216:0016:0916:1116:1616:2616:2817:10
最早日暮      17:03 
東経145゚35' 141゚21'140゚44'141゚09'140゚52'140゚07'139゚45'130゚24'
北緯 43゚20' 43゚04'< 40゚49' 39゚42' 38゚16' 35゚36' 35゚39' 33゚35'
月日12/07前後  東京=11/29〜12/13 
(日暮)16:1716:3516:4416:4616:5117:0117:0317:45
 
基準点=旧東京天文台=港区麻布台2-1 大子午儀の中心跡=E139゚44'40.9",N35゚39'16.0"
日没:基準点での太陽上辺の地平線に見えなくなる時刻.各地は経緯で再計算.
日暮(夜明):太陽中心の伏角が7゚21'40"になる時刻。(として再定義)
寛政歴以後の「暮れ六つ」「明け六つ」 (薄明かりと夜の境界時刻)
 

【 資料−5 】
【 拡声器規制条例 】
 ……………… 六法全書には非掲載 ……………… 東京都条例??
規制条件=10メートル離れた地点で90[dB]以下.
      (未入手)
 現実の取り締まりでは警察官が騒音計を手に持って地上高1m〜1.5mの音圧レベルを計測していて、計測距離は好い加減で、刑事弾圧の要件としては極めて曖昧である。が、これを逆用すれば、トランペットスピーカーの軸を下に向けないことと、ハウリングを起こさない様&音を歪ませないようミキサーを貼り付けて調整し、宣伝カーの窓を開けて運行すれば(ハウリング限界で制限され)物理的には規制水準にならないし、右翼のような威嚇的放送を避ければ説得力有る弾圧の口実はなくなるから不当弾圧されても無罪判決を得やすい。その場合アブナイのは「検察スタンプマシンの斯界の権威」=「古畑鑑定」である。裁判官は技術的物理的判断を嫌って鑑定人=検察スタンプマシンに丸投げして有罪にする横着なのが少なくない。だから設営仕様をきちんと押さえて、不快な音を出さない注意深い運行が必要だ。

【 資料−6 】
【 公職選挙法 】
第1章 選挙期日
第31条(総選挙)衆議院議員の任期満了に因る総選挙は、
4 総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない。
第32条(通常選挙)参議院議員の通常選挙は、
3 通常選挙の期日は、少なくとも十七日前に公示しなければならない。
第33条(一般選挙、長の任期満了に因る選挙及び設置選挙)地方公共団体の議会の議員の任期満了に因る一般選挙又は長の任期満了に因る選挙は、
5 ………選挙の期日は、次の各号の区分により、告示しなければならない。
一 都道府県知事の選挙にあつては、少なくとも十七日前に
二 指定都市の長の選挙にあつては、少なくとも十四日前に
三 都道府県の議会の議員及び指定都市の議会の議員の選挙にあつては、少なくとも九日前に
四 指定都市以外の市の議会の議員及び長の選挙にあつては、少なくとも七日前に
五 町村の議会の議員及び長の選挙にあつては少なくとも五日前に
第34条(その他の選挙)衆議院議員及び参議院議員の再選挙又は補欠選挙は、
一 参議院議員及び都道府県知事の選挙にあつては、少なくとも十七日前に
二 指定都市の長の選挙にあつては、少なくとも十四日前に
三 衆議院議員の選挙にあつては、少なくとも十二日前に
四 都道府県の議会の議員及び指定都市の議会の議員の選挙にあつては、少なくとも九日前に
五 指定都市以外の市の議会の議員及び長の選挙にあつては、少なくとも七日前に
六 町村の議会の議員及び長の選挙にあつては、少なくとも五日前に
第164条の6(夜間の街頭演説の禁止等)何人も、午後八時から翌日午前八時までの間は、選挙運動のため、街頭演説をすることができない。
2 第百四十条の二第二項連呼行為における静穏の保持の規定は、選挙運動のための街頭演説をする者について準用する。
3 選挙運動のための街頭演説をする者は、長時間にわたり、同一の場所にとどまつてすることのないように努めなければならない。


【 資料−7 】
【 標準結線1 】内蔵リモート制御.補助バッテリー付き
 
 
 
 
【 資料−8 】
【 標準結線2 】外付きリモート制御.補助バッテリー付き

【 資料−9 】
【 低域遮断濾波器 】


【 資料−10 】
【 拡声器装備、部品表 】


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